帯状疱疹、ヘルペス
帯状疱疹
医療機関での早期の診断と治療が必要です。早期の治療開始により比較的早い快方が期待され、痛みが長引くリスクが下がります。
最近ではコロナ禍での増加やコロナワクチンとの関連なども話題になっています。
また、帯状疱疹ワクチンについてもご質問いただく機会が増えました。
原因と仕組み
水痘(みずぼうそう)にかかると、その後ウィルスは神経の根元に休んだ状態で残ります。その潜伏したウィルスが免疫低下時に再活性化して増殖し神経を伝わって皮ふに出てくるのが帯状疱疹です。
このため皮膚の症状とウイルスの通り道となる神経の痛みがセットになっているのです。
時々水痘の記憶がないとおっしゃる方もいますが、成人の水痘抗体保有率は90%以上とされています。
以上のような仕組みですので帯状疱疹の方から感染して帯状疱疹になることはありません。以前から体内にあったウイルスが増えて発症します。
なお、帯状疱疹が周りの人にうつった場合は水ぼうそうになりますが、家庭内など皮膚を露出した状態で密に接する場面に限られます。
また帯状疱疹に感染力があるのは皮ふ表面が黒いカサブタになるまでの期間です。
2014年10月に水痘ワクチンが定期接種となってからは、家庭内感染で子どもが水ぼうそうになるケースは減りました。
症状
急に体の片側に痛みが出て、その後周辺の皮膚に赤い発疹が出たら帯状疱疹を疑ってください。やがて赤みが水ぶくれとなり、最後は黒いカサブタになった後に茶色い痕になります。
痛みは年齢、体の部位、個人による差大きいですが通常は1〜2ヶ月以内に軽くなります。長期に痛みが続くのは60歳以上の方が多いので、そういった事にならない様にやはり早期の抗ウイルス薬による治療が大切です。
実は帯状疱疹だった!紛らわしい症状
「体のある部分が急に痛くなったので 湿布を貼ったらかぶれました」と患者さんがおっしゃるので見てみると、湿布のかぶれではなく実は帯状疱疹だったというのはよくあります。
また、「たくさん虫に刺されてしまってチクチク痛痒いです」と来院される方もいます。一見虫刺されのように赤くプツプツしていて、初期は痛みでなく痒みのみの場合もありますので注意が必要です。
なお、他の病気との区別が難しい場合は診断確定のためウイルス抗原検査キット(デルマクイックVZV)を使う場合があります。
治療薬
抗ウイルス薬 (バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビル)の飲み薬をできるだけ早期に開始することが大切です。
この他、痛みに対しては適宜 痛みを抑える飲み薬を合わせて服用します。
予後
年代により重症度が異なります。一般的に年齢の高い方が神経痛が長引いたり皮ふの症状も広く重くなります
現在は<治療薬>の項のようにとても良い飲み薬があり、きちんと治療すれば早い快方が期待出来ます。
こういった薬は早めに始めることが何より大事ですので、症状に気付いたら出来るだけ早くご受診ください。
私は帯状疱疹がスムーズに治った患者さんに治療のお陰だとおっしゃって頂いた時は、早めに受診された患者さんご自身の判断の正しさが何よりとても大事だったのですと申し上げています。
合併症
余談ですが 四谷怪談に出てくる幽霊「お岩さん」は帯状疱疹が顔に出たものではないかと言われています。
このように帯状疱疹は頭や顔に出る場合が最も重症となりやすく、眼科や耳鼻科の先生と協力して治療する必要がある合併症を起こすこともありますのでやはり早期の治療が望まれます。
予防
帯状疱疹が治った後の患者さんに再発予防のために帯状疱疹ワクチンをすぐ接種すべきか、よくご質問いただきます。
一般的には50歳以降は接種が推奨されていますが、帯状疱疹が治った直後の方に限って言えば、実際に病気になったことで一旦は免疫が持ち直していますので接種まで2~3年は置いてもいいのかもしれません。
当院はワクチン接種には対応しておりませんが以下簡単にまとめます。
まず 帯状疱疹ワクチンの種類は
1.生ワクチンと
2.成分ワクチン(乾燥組替えワクチン)があります。
1.生ワクチンは比較的低価格、有効率50% 免疫は8年間程度まで。
2.成分ワクチンは高価格、有効率95%以上 8年後も80%以上免疫が続く。
ただしコロナワクチン接種時のような副反応あり。
以上のデータより米国では帯状疱疹の予防には2.成分ワクチンが推奨されています。非常に高価ですが、最近は医療費助成を行う自治体が増えているようです。
なお帯状疱疹ワクチンを接種しても単純ヘルペスの再発は予防できません。
再発について
以前は帯状疱疹になるのは一生に1回と言われていました。
しかし再発(2回目)は数%程度にはみられます。(1年以内の再発はまれ、違う部位が多い。)
ただし、30〜40歳代ぐらいまでの若い方で頻回に帯状疱疹になる場合は特別に免疫が下がる病気を考えなくてはいけません。
帯状疱疹と単純ヘルペスの違い
ヘルペスウイルス というグループの中の似てはいても違うウイルスです。
簡単に言ってしまうと帯状疱疹の方が病気になる回数が少ないけれど比較的重い症状、単純ヘルペスは回数は多いけれど軽めの症状です。
似ているウイルスですので同じ種類の抗ウイルス薬の飲み薬を帯状疱疹の時は多い用量で、単純ヘルペスの時は少ない用量で服用します。
次の項目の口唇ヘルペスはこの単純ヘルペスが唇の周りに出るタイプです。
なおこのように治療薬は一部共通でも、ワクチンに関しては帯状疱疹ワクチンを接種しても単純ヘルペスの再発は予防できません。
口唇ヘルペス
原因
単純ヘルペスウィルス1型です。
このウイルスは幼児期に家庭内で知らない間にうつり顔の神経に潜伏するもので、多くの方が持っています。そして、それが下記の<誘因>により再度増えて発症します。
誘因
睡眠不足や疲れ、ストレス、紫外線、過度の暑さ寒さなど免疫が低下する時に起こりやすくなります。
治療
やはり一番よく効くのは早期の飲み薬です。
赤みやカサブタが長引いたりするのを最小限にして、次回以降の再発のリスクを下げることにもつながります。
その早期の治療開始のため他の病気との判別が必要な際はウイルス抗原検査キット(デルマクイックHSV)用いる場合があります。
また最近では再発性の単純ヘルペスに対し事前に備える治療法PITも保険適応になりました。
性器ヘルペス
原因
単純ヘルペスウィルス2型で、主として性行為で感染します。
やはり再発によるものが多いですが、初感染で発熱や痛みなどもある重い場合は点滴治療などが必要になるため大きな病院への受診をお勧めします。
誘因
疲れやストレス、性交、紫外線、過度の暑さ寒さなど免疫が低下する時に起こりやすくなります。
治療
再発したら早期の飲み薬が大切です。
また性器ヘルペスにだけ認められている再発抑制療法は年に6回以上再発を繰り返す方が対象で、毎日お薬を飲むことで症状が現れる前にウィルスを抑える治療法です。
完全にウィルスそのものを取り除けるわけではないですが、症状のつらさやパートナーにうつしてもしまうかもしれないなど不安も軽くなります。